私たちの先祖は、雨と共に生き、その雨の情景や振り方などから雨1つ1つに名前を付けて親しんでいました。
日本情緒溢れる雨の名前は、古き良き日本を感じられる物の中の1つであり、美しい魅力です。
季節にちなんだ名前が多く、春夏秋冬から今回は、秋冬に降る雨の名前を見ていきたいと思います。
秋出水
あきでみずは、気温的にはまだ夏のお盆を過ぎたあたり、秋の始まりの頃に台風や豪雨により河川が氾濫して水が溢れ出す洪水のことです。
俳句などで季語として使用されており、一生懸命育ててきた農作物や稲などが、ダメになってしまう様子が浮かびます。
秋雨
あきさめは、現代でも聞きなれた言葉だと思います。
夏から秋に季節が変わる時に降る冷たい雨のことです。冷たい高気圧の秋雨前線により、一気に季節が入れ代わり、冬へと近づきます。
伊勢清めの雨
いせきよめのあめは、毎年10月17日に伊勢神宮で執り行われる神嘗祭という神事の翌日に、祭祀の後を清める雨のことです。
伊勢神宮に限らず言えることですが、参拝の際に降る雨は、お清めの力があり縁起が良いとされています。
秋湿り
あきじめりは、秋の長雨で空気が湿りがちになることを言います。秋の晴れた日はカラッとしている為、湿っぽさを感じやすくなります。
俳句の季語でよく使われます。
秋時雨
あきしぐれは、秋の終わり頃に、降ってはすぐにやむ雨のことで、春に比べどこか侘しい感じを残します。俳句の季語として使用されることが多いです。
秋黴雨
あきついりは、秋入梅とも書きます。
秋になってから梅雨のように長く降る雨のことです。
秋霖
しゅうりんとは、初秋に降る長雨のことで、秋雨と同じ意味です。
すすき梅雨
すすきつゆは、秋雨や秋霖と同じ秋に降る長雨のことです。
秋と言えばすすきが穂をつけます。すすきの光景が目に浮かびますね。
冷雨
れいうは、秋の終わりに降る冷たい雨のことです。この雨が降るごとに寒さが増すので、季節が秋から冬に移り変わるのを感じられる言葉です。
時雨
しぐれとは、晩秋から初冬にかけて、晴れたり曇ったり定まらない天気の時に、降ってはすぐ止むような雨を呼びます。
春夏秋冬の中で、この時雨を用いた雨の名前はたくさんあります。
朝時雨は、朝に通り過ぎる雨。
夕時雨は、夕方に通り過ぎる雨。
小夜時雨は、夜の時雨です。
村時雨は、一時的に激しく降る雨。
横時雨は、横殴りに降る雨。
片時雨は、一方は晴れているのに、一方では降っている雨です。
月時雨は、月明かりの中の雨。物語の中のような景色を思い浮かべます。
北時雨は、北風とともにやってくる雨。
北山時雨は、京都の北山の風物詩です。
冬時雨は、冬の初めに降ったかと思うと晴れて、また降りだし、短時間でコロコロ変わる通り雨。
山茶花梅雨
さざんかつゆとは、12月上旬の山茶花が咲く頃に降る雨のことを言います。
秋と冬の境目に降る雨のことです。
山茶花梅雨は、期間が短く天気が大きく崩れることはないですが、連続して降り続く雨のことです。
氷雨
ひさめとは、みぞれや雪になる前の凍るように冷たい雨の事です。または、空から降ってくる氷の粒の事です。
氷雨という言葉は、俳句においては夏の季語になります。
寒九の雨
かんくのあめとは、寒の入りの1月5日から9日目の1月13日に降る雨のことです。寒九の雨は豊作のしるしと言われていました。太平洋側では、晴れた日が続くため、この雨は恵みの雨となり、この時降った雨水は薬になると言われていました。
寒の雨
かんのあめとは、寒の入りから立春の前日までに降る雨のことです。 冷え込みが強くなると、雪に変わる雨でもあります。
鬼荒い
おにあらいとは、大晦日に降る雨のことです。語源は鬼やらいです。
秋冬の雨の名前を見てきましたが、他にもまだまだ日本にはたくさん雨の名前があります。
雨が多い日本であるからこそ生まれた名前であり、季節によって雨の降り方や見え方が異なる日本独特のものです。
季節に関係のない雨の名前もあります。
丑雨
うしあめは、真夜中の丑の刻1〜3時頃に降り、朝には止む雨。
雨飛
うひは、風に吹かれながら降る雨。
煙雨
えんうは、煙の様にかすんで降る霧のような雨。
黒雨
こくうは、黒い雨雲から降る雨。
小雨
こさめは、小降りの雨。今でもよく使われていますね。
小糠雨
こぬかあめは、霧のように細かい雨。
細雨
さいうは、繊細で細い雨。
酸性雨
さんせいうは、酸化物が溶け込んでいる酸性の雨。
地雨
じあめは、強く降り続く長雨。
糸雨
しうは、名の通り糸のように細く繊細な弱い雨。
袖笠雨
そでがさあめは、袖を傘の代わりにできるくらいの小雨。
そぼ降る雨
そぼふるあめは、しとしとと降る雨。
朔日降り
ついたちぶりは、月の1日目に降る雨。
鉄砲雨
てっぽうあめは、弾丸のような勢いのある大粒の雨。
涙雨
なみだあめは、涙のようにほんの少し降る雨。
猫毛雨
ねこんけあめは、猫の毛のような細かな霧雨。
夜来の雨
やらいのあめは、昨夜から降り続いた雨。
我儘雨
わがままあめは、晴れた日に一部の土地に降る雨。
私雨
わたくしあめは、一部の地域に降る雨。
雨の名前は400種類以上あると言われています。
名前と雨の種類を見て、雨を感じるのもいいかもしれないですね。