「注文住宅を建てる」あるいは「建売住宅・中古住宅を購入する」どちらにしてもマイホームを手に入れるというのは、長い人生で一度経験するかどうかの最大の買い物と言えるのではないでしょうか。
マイホームを手に入れると大抵の場合、数十年住み続けるので、立地条件や内外観のデザイン、間取りなどさまざまなこだわりを持って選んでいるかと思います。
普段直接目にすることがないので、見落とされがちな部分ですが、屋根の選び方ひとつで家の寿命を大きく左右する雨漏りのリスクが大幅に変わるのをご存知でしょうか?
今回は、日本のみならず、世界でも多くの住宅が採用している「切妻屋根」を徹底解説していきます。マイホームを購入する際の参考に是非ご覧ください。
切妻屋根の特徴
代表的な屋根の種類は、「切妻屋根」、「寄棟屋根」、「片流れ屋根」、「陸屋根」の4種類。今回はその中でも最も一般的な「切妻屋根」を解説します。
切妻屋根の形は、四角い建物に開いて伏せた本を乗せたような形です。
屋根が2つの面だけで構成されていて非常にシンプルな構造となっていて、以下の特徴が挙げられます。
- 雨水の軌道が分かりやすく雨漏りが起きにくい
- 他の屋根に比べて施工が簡単
- コストを抑えることが出来る
これらの特徴があることから、切妻屋根は多くの住宅で採用されてきました。
覚えておきたい屋根の部位
これから屋根を選ぶにあたり、覚えておくと便利な屋根の部位についてみていきましょう。
屋根の部位には聞き慣れないものもありますが、意味がわかると雨漏り対策にも活かすことができますよ。
【棟(ムネ)】
屋根の頂上にある水平な部分で、主棟や大棟とも呼ばれる部位です。
【鼻隠し(ハナカクシ)、破風(ハフ)、ケラバ】
この3つは、すべて屋根の端の部分なので、区別がつきにくく注意が必要です。
鼻隠し
屋根の端のうち雨樋が付いている軒先の先端に取り付けられる横板状の部材のことです。
美観をよくするだけでなく、横からの風から屋根を守る役割もあります。
破風
屋根の端のうち雨樋が付いていない方の軒先の先端に取り付けられる部材のことです。
横や下からの風から屋根を守るほか、防火の役割もあります。
ケラバ
外壁から飛び出している屋根の部分のうち、雨樋が付いていない側のことです。
【妻壁(ツマカベ)】
外壁4面のうち、屋根の下が三角になっている外壁のことです。
これ以外にも多くの部位がありますが、基本となるのは、この5つです。
聞きなれない言葉もありますが、これが分かっていると屋根の選び方が格段に変わります。
切妻屋根のメリット・デメリット
多くの住宅に採用されている切妻屋根は、メリットの多い使いやすい屋根ですが、当然デメリットもあります。ここでは屋根を選ぶ際のメリットとデメリットを比較してみましょう。
切妻屋根のメリット
構造がシンプルなので雨漏りに強い
雨水の侵入口として多いのが、屋根の面をつなぎ合わせた接合部です。
どんな優れた屋根材を使用していても、経年劣化によるひび割れや隙間などが発生しやすいため、雨漏りリスクが大きい場所だといえます。
つまり、雨漏りリスクを抑えるには接合部が少ない屋根が適しているということになります。
その点、切妻屋根の接合部は1カ所しかないので、他の屋根に比べると、雨漏りに強いと言えます。
コストを抑えられる
構造がシンプルということは、施工期間が短く、材料も少なく、人手も少なくすることが出来るので、コストを抑えることが出来ます。
また、定期的なメンテナンス費用も同じ理由で抑えることが出来ため、多くの住宅で採用されています。
湿度の高い日本に適した換気性の良さ
湿度の高い日本の住宅で重視しなければならないのがカビ対策です。
長期間にわたる湿気が原因の黒カビにより、住んでいる人の健康にも影響を及ぼすことがあります。
切妻屋根は屋根が三角形でスペースが確保しやすいため、通気口を設けて室内を快適な状態に保ちやすい構造になっています。
切妻屋根のデメリット
他の外壁に比べ妻壁が劣化しやすい
切妻屋根最大のデメリットが両側の妻壁です。構造上、屋根に守られていないため雨風が直撃することで劣化が早くなります。特に破風板部分が影響を受けることが多いため、定期的なメンテナンスが必要です。切妻屋根を採用している住宅の雨漏りは、この箇所が原因であることが大半です。
世界中で採用されており個性が出しにくい
シンプルな外観であるため、和風、洋風問わずどのようなデザインにも対応できるというメリットはありますが、その反面、デザインにこだわる場合、個性が出しにくいというデメリットがあります。
切妻屋根の雨漏りリスク
メリット・デメリットで解説した通り、切妻屋根は、日本の気候にあった雨漏りにも強いシンプルな構造の屋根であり、コストパフォーマンスも高いので採用している住宅が多いことも頷けます。
ただいくら雨漏りに強いとはいえ、経年劣化は防げません。
特に破風板や妻壁は、構造上、雨風の影響を受けやすい部分なので定期的なメンテナンスが必要です。
メンテナンスの目安として、これらの症状が現れていたら要注意!
- 破風板の塗装が剥がれてきていないか
- 妻壁に雨染みやひび割れがないか
- チョーキング現象(壁を手で触ると白い粉が付着する現象)が起きていないか
これらの現象が発生しているということは少なからず、屋根の要である棟も劣化が進んでおり、やがて雨漏りを引き起こす可能性が高まってきていると言えます。
雨漏りは、ただ雨水が室内に入り込むというだけではありません。
木が湿気を含んでシロアリを寄せ付け、結果的に住宅の耐久性が著しく低下してしまったり、黒カビの発生による体調不良の原因になったりするなど、二次被害が発生するおそれもあります。
長い人生の中でも、非常に大きな買い物であるマイホームを守るためには、定期的なメンテナンスは欠かせません。「これぐらいなら大丈夫」と放置してしまうことで被害が拡大するケースもあるので、異変を見つけたら専門業者へ早めに相談してくださいね。
↓他の屋根の形も検討するときには、こちらの記事もご覧ください 家を買うことは一生の大きな買い物です。 これから、マイホームを購入しようとお考えの人は、エリア・予算・間取り・デザインなどの様々な要因を検討されているのではないでしょうか。 なかでも、屋根のデザインは ...
屋根の形で雨漏りしにくいのは?切妻・寄棟・片流れ・陸屋根の選び方