木造住宅の場合、日本全国どこでもシロアリによる被害(蟻害)の心配は付いてきます。
近年、中古住宅をリフォーム・リノベーションして、新しい価値を生み出して販売したり、古民家の良さを見直して自らリフォームを手掛ける人も多く見られます。
古くても価値あるものとして再利用することは、たいへん素晴らしく歓迎すべき活動ですが、築年数の古い建物は外から見ても分からない危険が潜んでいる場合があるので、要注意です。購入前の事前の目視検査などで、シロアリの有無をしっかりと調べておきたいものです。
●蟻害を引き起す要因
●シロアリの侵入経路
●シロアリの被害と対策
●まとめ
蟻害を引き起す要因
先にもシロアリと雨漏りの関係を書きましたが、シロアリが引き起こす被害は、住居の経年劣化などとは性質が異なります。
雨漏り、漏水、結露といった湿気を伴う劣化が起こっても、被害は少ないから、日常生活に問題のない場所だからと修繕せずに放置していると、蟻害を引き起す主な要因となってしまいます。シロアリは湿気をたいそう好みます。
「そこに湿気があれば、建物の2階まででも食べ上る」ことがあります。
また、シロアリではなく小型の蟻「ヒメアリが湿気を多く含んだ壁内などに巣を作る」ケースもあり、蟻害と湿気には深い関係があるのです。
木造住宅の柱や床、壁内だけではなく、ベタ基礎のセメントにもシロアリが入り込みますし、配線やガス管などの塩化ビニールパイプや断熱材などにも被害が及ぶこともありますから、地面からの湿気を吸いやすいところや、防蟻材などの対策をしていない住宅は注意が必要です。
シロアリの侵入経路
「ありとあらゆるところから侵入してくる」と白蟻防除の専門家は言います。
「物理的にシロアリの侵入を100%防ぐのは難しい」とも説明しています。
・ベタ基礎の床下
人の目にはシロアリが入りこむ隙間は無いように見えますが、実際には、基礎を施工する際に打ち継ぎした部分に微細な隙間があって、そこから、シロアリが浸入します。
基礎の立ち上がり部分に、下から伸びる蟻道が2本ありました。床下に侵入したのだろうことがわかります。
・地中からの鉄製配管
塩化ビニールと断熱材が巻かれていた鉄製の配管は、地中から建物内部に引き込まれていました。その配管の中に蟻道ができていて、シロアリが建物内に侵入したのです。
・玄関の上がり框
雨降りに塗れた靴や傘の水分が玄関内に残ります。湿気を含んだ玄関の上がり框内の木材が食われていることもあります。玄関の化粧板やタイルなどから見ても、その気配はなく一切わかりませんが、土間とタイルの隙間から侵入するといいます。
シロアリの被害と対策
シロアリは2階部分にも侵入して被害を大きくします。
2階の出窓付近から起こった雨漏りが、サッシ横の壁内を伝って1階まで流れました。建て主もすぐには雨漏りに気付いていなかったのですが、雨漏りを放置していたことで、シロアリの侵入経路を作り、2階まで誘導した形になってしまいました。
雨漏り修繕工事をしてみて、初めてシロアリ被害に気付く人も少なくありません。
サッシの雨漏りは結露の問題も含めて、微細であれば拭いて様子見という人もいますが、一度シロアリに侵入を許すと、サッシ横の柱全体を食い尽くして、建物自体の安全性まで脅かすことになります。また、被害が壁内全体などに広がると、修繕にかかるコストも大変大きくなるので、事前の対策、早期の修繕が必至と言えます。
シロアリの被害を防ぐためには、雨漏りや漏水などの劣化を放置せずに小さいうちから修繕することと、シロアリの入り込みにくい物理的な防御対策に加えて、「定期的な検査や防蟻剤などの対策を続ける」ことが重要な対策となります。
まとめ
新築物件などには、防蟻駆除済みの保証が付いている物件も多くなりました。しかし、期限を過ぎると、再度の検査や薬剤散布を怠ってしまうこともあります。面倒だから、ペットがいるから、お金が掛かるから、理由はいろいろでしょうが、保証期間の間であっても雨漏りや漏水の劣化があれば、シロアリにとっては格好の餌場となってしまいます。早期対応、早期駆除は大切なことである以前に、大事な資産を守る手段でもあります。
シロアリ駆除は新築の時に1度だけではなく、定期的な検査と防蟻剤での対策を続けていきましょう。