雨漏りが起こるとその浸入箇所を探しますが、多くの場合はその上方に原因があると思いこんでしまいます。しかし、浸入箇所がいつも真上にあるとは限らないのです。
1階トイレのモルタル床に、水が溜まっていることに建て主が気付き、住宅会社に修理を依頼しましたが、その後も雨が降ると水が溜まります。不信感を抱いた建て主は、住宅検査会社に調査を依頼、本当の侵入箇所は住宅会社が思い至らなかった場所である事がわかったのです。
●トイレの水たまりに気付いて
●雨漏り調査でわかったこと
●現場の盲点と対策
●まとめ
トイレの水たまりに気付いて
木造2階建ての住宅、建て主が雨漏りに気付いたのは、新築引き渡し後半年ほど経っていました。大雨が降った後に、1階トイレの外壁側モルタル床にわずかに水が溜まっていたのです。雨漏りを疑った建て主は、すぐさま建築業者に連絡をして補修してもらいましたが、その後も雨が降ると同じ場所に水たまりができました。
繰り返す水たまりに不信感をいただいた建て主は、住宅検査会社に雨漏りの調査を依頼したのです。
雨漏り調査で分かったこと
住宅検査会社の再検査では、トイレに近い建物の内外の目視や図面などを基にして、雨水の浸入が疑わしい箇所を洗いだしていきました。
2階の外壁はそのまま急勾配の屋根の仕様で、屋根と外壁は同じ板金仕上げです。取り合い部に軒がなく、縦のはぜ葺き屋根が「く」の字型に折れて1階の外壁に連続した造りです。
雨水の浸入と考えられる箇所は6つ。
①屋根と壁の取り合い
②1階小窓の庇と壁の取り合い
③②の庇の側面まわり
④③の反対側庇の側面まわり
⑤1階小窓横換気口
⑥屋根の棟板金まわり
最も怪しいと思われる小窓は、水染み発生のトイレの横(洗面室)に取りつけてあります。
水平方向に1mほど離れています。小窓の窓台にはクロスの剥がれが見られ、小窓上部には雨漏りのトラブルになりがちな庇があります。
目視調査で、外壁との取り合い部に小さなシール切れも見つかったことから、小窓周囲、あるいはその上方からの雨水浸入の可能性が高くなりました。
疑わしい6カ所に、1つずつ散水試験を実施したところ、小窓庇の片側側面に散水して間もなく、問題のトイレ床に水がこぼれ始めました。
他では漏水しなかったことから、検査会社はシールの切れた庇の側面を雨水浸入口と断定したのです。
建て主への報告と補修を促し、検査で見つかったシールの劣化や小さな穴の補修も同時に行うことを勧めたのです。
今回の結果で、当初の住宅会社の調査や補修が適切で無かったと考えられますが、雨漏りに
対するノウハウが浸透していないことがわかった例となります。
現場の盲点と対策
最初に雨漏りの調査と補修をした住宅会社の誤りは、何処に問題があったのでしょうか。
1階のトイレでの雨漏りということで、雨水の浸入口は「その上方にあるはず」と考えたようです。たしかに外に出てみると、トイレのほぼ真上になる位置に外壁を貫通させたテレビアンテナなどの配線類が取りつけられていました。
外壁貫通部から入った雨水が、壁内を下って1階のトイレ床に染み込んだと判断した住宅会社は、外壁貫通部の周囲にシールで処理して補修を終えたのです。
しかし、その後も雨漏りは止まらなかったというわけです。
今回の住宅会社の判断はよくありがちなことですが、雨漏りの原因は「真上にあるとは限らない」のです。
真上ばかりを気にしていた住宅会社は、もう一つの雨漏りサインに気付いていませんでした。
小窓まわりのクロスに雨水が染みて一部で剥がれていたことです。
真上に意識がいったことで、視野を狭めてしまったのです。
小窓のクロス剥がれに気付いていれば、トイレの床との関連も考えて範囲を広めた調査ができたと思われます。
雨水は壁内をどんな経路で伝わってくるのかわかりません。
発生場所の真上にこだわらずに、範囲を広げて調査することが必要なのです。
まとめ
新築まもなくの住宅で雨漏りを発見すると、驚きとともにたいへんショックを受けてしまいます。住宅会社に連絡して補修したにも関わらず、雨漏りは繰り返されていると、不信感のなにものでもなく怒りを感じます。結果として、住宅会社が間違った調査結果と補修をしたのですが、「真上だろう」ではなく、専門の住宅検査会社の「ここかもしれない」「ここも考えられる」という広い視野と経験が、雨水浸入口の特定につながるのだとわかりました。
通常、私達の住まいに不都合が生じたら、まずは売買契約した住宅会社に連絡を取ります。
その会社が住宅のトラブルに対して、正しい判断と補修ができる対応力、経験を有していることを願いたいものですね。