新しく家を持つとき、どんな間取りにしようか、和風、洋風、欧風がよいとか、悩みながらもわくわくと楽しいもので、その家に起こるかも知れない雨漏りなど考える人はいないことでしょう。誰しも希望するデザインや素材は好みのものにしたいもの。
施工業者は施主の希望をできるだけ叶えたいと考えながらも、耐久性や防雨対策などリスクを説明しながら、夢実現へと近づけていくのです。
危ないデザインに起こりうる雨漏りを防ぐために、重要な2つの考え方があります。
●危ないデザイン×雨漏りを防ぐ設計
●リスク回避設計
●リスク対応設計
●まとめ
危ないデザイン×雨漏りを防ぐ設計
建て主の要望するデザインだと雨仕舞い(防水施工)が好ましくなくなると分かっていても、お客さんが望んでいることだから、仕方なく採用せざるおえない場合も少なくないといいます。建て主のために採用したデザインが、雨漏りを呼び込むケースが後を絶たないのです。
最近の新築物件を目にするとカラフルな塗装や素材の異なる外壁材、片流れの個性的な屋根、建物と一体化したバルコニーなど個性的な外観の家が多くなったように思われます。
例えば、一階の外壁はタイル張りで、二階は吹き付けモルタルといった異なる仕上げ材が使われている家も見かけます。
この仕上げ材の異なる壁面も、境界線部分が雨水浸入の起点になりやすく要注意なのです。
できれば、リスクのないデザインでの建築を勧めたいが、建て主は生涯で何度も建築できるものではないし、他にはない自分の希望を叶える家を持ちたいとの思いも理解出来ます。
デザインと雨漏りリスク、施工業者はその両者のせめぎ合いの中で方針を決めていくのです。
防雨・耐久計画の専門家間では、「リスク回避設計」と「リスク対応設計」の考え方が重視されています。
リスク回避設計
専門家の「経験上リスクが高いことが明らかになっている設計を控えて、材料の性能や完璧な施工に過度に依存しない」ことになります。
設計上の例でいうと、次のような配慮を行います。
・軒の出をある程度確保し、霧除け庇を設ける。陸屋根(パラペット)は避ける。
切妻屋根や寄棟屋根など雨風が直接軒に吹き付けず、屋根が最大限に活かされている設計が望ましいが、他者と異なるデザインを要望する建て主を無下にできないのが現実です。
・屋根の形状は、谷、片流れ、壁止まりの軒をつくらない。
屋根の中に水の溜まりを作らないことはもちろん、妻面に軒がないために、棟端部やケラバがそのまま外壁の頂部になっているので、繋ぎ目部分から壁内部に雨水が浸入しやすくなります。
・屋根の構造では、緩勾配や逆勾配を避ける。
屋根に水が留まる時間が少ない方が、雨漏りのリスクを避けることができます。
・一体型バルコニーの採用や局面になる壁は避ける。
建物本体と一体化しているため、漏水した場合の被害が大きくなります。外壁やサッシの取りつけにも注意が必要になり、曲面も避ける方がリスク軽減になります。
リスク対応設計
雨漏りリスクが高くなりがちな設計であっても、顧客の要望や法規上やむおえない場合は、リスクの所在とその大きさを明確に把握して、設計上どのような配慮をすればよいか明らかにします。雨水浸入の備えと雨水を逃がす対策をとることが重要になります。
・片流れ屋根など軒や庇が短い場合は、横や下から雨水が入りこむ恐れがある事を想定して施工します。
・雨仕舞いが曖昧になりがちな外壁に連続する壁面のデザインなどは、雨仕舞いを考慮した納まりになっているようにします。
・バルコニー周りに追加する部材は、雨仕舞いを忘れがちになります。後で壁に取りつけるたりすると防水施工が複雑になり、シールを打っても切れやすくなるため、接合部分が雨水浸入の弱点になりやすいのです。
・外壁に異なる材料を使用する時は、雨仕舞いを間違いやすくなります。境界面での施工ミスが起こりやすいので注意が必要です。
まとめ
新しい家はカッコよくて、見た目でも他所と違うことに優越感を持ちたいものです。
その理想とした家が雨漏りをするようになったら、とても悲しく怒りと失意に襲われてしまいます。何故、こんなことになったのかと悔やんでも、業者にクレームを言っても、修繕してくれたとしても、シミや汚れ、修理したという事実は消すことが出来ません。
施工業者も雨漏りが起こっても仕方ないなどと考えているわけではありません。
どのようなデザインが雨漏りのリスクを高めるのか、出来る限りのリスクを回避する設計にすること、無理な要望は後のリスクに繋がることを理解しながら、業者との話し合いを行っていきましょう。