今のように専門家がおらず、気象観測技術が発達していなかった昔は、空の様子や吹く風の感じ方、生き物の行動を観察し、それらの変化を参考にしながら天気を予知していました。
これらは、昔の人たちの様々な経験により、言い伝えやことわざとして現代に受け継がれています。天気を予知することで、農作物や日々の行動などをうまく計画することができ、より良い暮らしに繋がったのではないかと思います。このことは、天である空を観て、未来の天気を望むことから、観天望気(かんてんぼうき)と呼ばれています。
言い伝えやことわざとして残っているとはいえ、気象学が発達した今、昔の人の経験値は、ただの言い伝えではなく、科学的な根拠があるものだということがわかっています。
忍者は皆さんご存知ですよね。忍者と言えば巧みな忍術を使い、素早い動きと忍び足で敵を交わすイメージが強いですが、万川集海という江戸時代に作成された忍術の秘伝書があります。その中には、観天望気がいくつか記されており、忍者にとっては天気の予測は絶対に必要であったものだということがわかります。観天望気は、人間による長年の観察力と経験値から成り立っている天気予報なのです。現代のように明日だけではなく、週間天気として細かくわかるようになったのは、気圧の発見が大きいですが、あまり天気予報に詳しくない人にとっては、観天望気をうまく活用して天気予報を伝えてくれた方がとてもわかりやすいかもしれません。それだけ昔の人の経験値は、現代の私たちにもわかりやすく残っているものだということです。
観天望気には様々なものがありますが、どんな言い伝えがあったのか、その中からいくつか見ていきたいと思います。
ツバメが低く飛ぶと雨
ツバメの餌となる蚊などの虫や昆虫は、低気圧が近づき空気中の湿気が多くなると、羽が水分の重みで高く飛べなくなります。ツバメは、飛びながら空中で餌を食べるため、低い位置を飛ぶ蚊などを捕らえるために、同じように低く飛ぶため、雨が近づいていると言われています。昔の人の鋭い観察力で、ツバメの特徴を知っているからこそ発見できるものだと思います。
朝焼けは雨
朝焼けは、太陽の方向である東の空が、筋雲が広がり赤く染まって見えるものです。日本の天気は、西から東へと移り変わるため、東の空が晴れていると西の方から雨になる可能性が高いと言えます。
夕焼けは晴れという言葉もありますが、このとき西の空は筋雲などなく澄んでいて、強い黄色からオレンジ色、さらにピンク色へと変化していきます。綺麗な空と夕焼けが見られたら晴れになる可能性が高いでしょう。どちらも雲の量が少ない方が、晴れになる可能性は高いです。
これらは、高気圧と低気圧が交互に入れ替わる春と秋によく当てはまります。
日がさ月がさは雨
昼間に、太陽のまわりに白いぼんやりした光の輪ができることがあります。夜になって月のまわりにも同じように光の輪が見られることがあり、これらを日がさ、月がさと呼びます。雲の種類の中でも最も高度が高い巻雲(けんうん)や巻層雲(けんそううん)という名の雲が、太陽や月の前面に現れたときに見られる現象です。巻雲や巻層雲は、低気圧が近づく前に現れることが多いため、日がさ月がさが見られると、徐々に天気は下り坂となり雨が降り始めると予測できます。
飛行機雲が消えにくいと雨
多くの人が、飛行機雲をたくさん見かけたことがあると思いますが、なぜ飛行機雲ができるのか考えたことはあるでしょうか。それは、普通に空に見える雲と同じ原理で、氷の粒が集結してできています。飛行機から出る排気ガスが見えているわけではなく、排気ガスに含まれる水が、空中で急激に冷やされることによって飛行機雲となって発生しています。また、飛行機の高速な移動速度により圧力の変化もプラスされ、気圧が下がることで空気が冷やされ水蒸気が氷の粒となることも飛行機雲ができる理由です。ですが、飛行機雲が必ずしも毎回発生するわけではなく、大気中の湿り具合が少なく乾いている時は、飛行機雲が発生してもすぐに消えてしまいます。しかし、大気中が湿っているときは、発生した飛行機雲はしばらく消えずに残っている状態となります。低気圧が近づいているときは、上空の高いところから空気が湿り始めるため、雨が近づいていると考えられるでしょう。
遠くの音が聞こえると雨
遠くの鐘の音や電車の音などが、ふと気づくととてもよく聞こえる事がありますが、これには湿度が関係しています。音は、気温の高い方から低い方へ曲がって伝わります。また、湿度が高くなると鮮明に伝わりやすくなります。このため、晴れの日の場合は地表の気温は高く、上空の気温の方が低くなるため、音は上空へ逃げていくので聞こえにくくなります。しかし、天候が悪くなると、地表と上空の気温の差が縮まるため、音がよく通って聞こえやすくなるというわけです。
観天望気は、他にもたくさん存在します。
普段は気にしない空や雲、風や音、生き物などを観察して天気を予測すると、また違った発見があるかもしれません。現代では、テレビをつければ毎日天気予報が見られ、携帯電話などいつでも天気予報を確認することが可能な時代となりました。ですが、天候の変化による自然の現象を少しでも意識して過ごしてみると、面白く天気を楽しむことができるかもしれませんね。