晴れているのに雨が降ってきたという経験をしたことがありますか?
雨が降るはずがないと思っている晴れの日に雨が降ると不思議に感じて驚きますよね。こういった現象は、天泣(てんきゅう)といい、天気雨とも呼ばれていますが、別名として主に関西方面では狐の嫁入りとも言われています。
なぜ狐の嫁入りというのか、疑問に思いますが、その前に、そもそも晴れているのになぜ雨が降るのでしょうか。
調べたところ、雨雲が、雨が地上に落ちる前に消えて見えなくなってしまった場合や、別の場所で降った雨が、上空で強風に流されて晴れている場所の地上に降った場合などが考えられるようです。この雨はまさしく予期せぬ雨というわけですね。
では、なぜ狐の嫁入りと言われるのかというと、これには諸説あるようです。
多くの人が崇拝している京都府にある伏見稲荷大社というところがあります。狐は何かに変身し人を化かす存在として伝えられていましたが、このことから、稲荷神であると信じられていた狐が降らせた雨だと考えられ、狐の嫁入りと言われるようになったようです。
元々は、夜分の山野に並ぶ狐火を、提灯に見立てて、狐の嫁入りと言われていました。狐には不思議な現象を起こす力があると信じられていたため、晴れているのに降る雨は狐の力だと思われていたのでしょう。
関西ではなく、新潟県阿賀町津川には狐の嫁入り行列という祭りが毎年5月3日に開催されています。
江戸時代の嫁入りを再現し、狐に扮した花嫁と仲人や他のお供の人たちを合わせて町内を練り歩くお祭りで、幼児が小狐に扮し、踊りを披露するなど微笑ましい姿も見られます。地区の人口よりもはるかに上回る人数の観光客が訪れています。
現在はあまり見られませんが、津川では古くから狐火が多く見られ、津川の狐火は世界一だと言われており、狐火に関する話が数多くあります。
このお祭りの特徴は、お面ではなく狐の顔のメイクを施し、お祭りの参加者だけでなく、駅員や警備員、観光客にもメイクが施され、街中皆が狐顔になるのだそうです。津川市街地には、お祭に関連した狐の嫁入り屋敷という施設があり、資料展示や体験を行うことができます。
不思議な現象である天気雨から、今もなお行事として残る狐の嫁入りは、古来の人たちにとっては狐の存在がよほど大きなものであったのだと考えられます。実はこの狐の嫁入りは、日本だけでなく世界各国でも似たような言い伝えがあります。日本と全く同じく、天気雨を狐の嫁入りと表したのがマレーシアです。韓国でも似たような言われで狐の雨とありますが、狐の雨よりも虎の結婚が主流のようです。他に狐が使われたのは、スリランカの狐の結婚式というものがあります。狐ではないですが、他の国でも様々な言われ方があり、面白いのはハワイのお化け雨という言われ方や、ロシアのキノコの雨などがあります。フランスではオオカミの結婚と言われ、インドではジャッカルの結婚や猿の結婚といい、イギリスの一部では猿の誕生日というそうです。
英語圏ではsunshowerと呼ぶそうですが、実際はもっと長い名称のようです。
この様に様々な名称がある天気雨は、やはり世界でもとても不思議な現象であったということがわかります。
天気雨は、強い雨というよりパラパラと降る弱い雨の印象があり、それが余計に不思議さを増し、幻想的な想像へと繋がっていったのだと思われます。世界各国の名称を見ても、動物にまつわる名称が多いことから、それぞれの国で様々な動物の由来があるのだと感じます。
不思議な現象である狐の嫁入りですが、とても縁起が良いとされていることをご存知でしょうか。雨というと、空はどんよりとし暗くなり、雨が降ることで濡れる印象が強いですが、晴れているのに降る雨は、喜んでいるのに涙を流すような嬉し泣きのように考えられ、古来の人たちは狐の嫁入りに遭遇すると幸せだ感じていました。
また、雨の後は虹が出やすいことから、願いが叶い幸せが訪れるとされていました。
そして、古来の人たちにとって特に重要だったのは、農作物にとって恵の雨と太陽の光が同時に起こるということです。現在のような水の設備がない時代は、少しの雨でも天からの恵と考えられていたため、雨が降り太陽の光も得られる狐の嫁入りは、とても縁起が良いとされていたのです。
このように、縁起が良いという考えは現代にも繋がっており、金運がアップする効果や人間関係が向上するなどといった嬉しい効果があると言われています。
なんとなく、晴れている中で雨に遭遇すると運が悪いと思いがちですが、全く逆で、幸せな意味があるということを知ると、遭遇したくてもいつ遭遇できるかわからない狐の嫁入りが少し楽しみになるのではないでしょうか。もし遭遇することがあれば、何か良いことが起こる前触れかもしれません。虹が見られたら尚、運気は向上すると思いますので、明るく前向きに過ごしましょう。