近年建てられた住宅にはあまり見られませんが、窓や玄関などの上部分に設置されている庇(ひさし)や霧除け、霜除け庇と呼ばれる部分についてお話ししたいと思います。
色々な呼び方がありますが、一般的には庇と呼ばれることが多いです。この庇ですが、近年建てられた住宅にはなぜあまり設置されていないのかというと、昔と違い、外観がシンプルでスタイリッシュな造りのものが多い傾向にあるため、あまり見受けられることが無くなったと思われます。実はこの庇は、思いのほか住宅にとって大切な役割を持っています。まずはメリットを見てみましょう。
大雨や横殴りの雨は避けられませんが、小雨程度の雨の場合は窓を開けておくことができたり、玄関であれば濡れずに傘をさすことが可能となります。
窓を開けっ放しにしていた場合も、雨の降り始めなど強くなる雨であれば室内への浸入も防ぐことができます。また、湿気の浸入もある程度防ぐことが可能となります。
コーキングなどの劣化防止にも繋がります。
窓や玄関には、雨漏り防止のために隙間を埋めるコーキング材が使用されていますが、雨や日光を直接受けることで劣化しやすくなってしまいます。庇があることで直接受ける紫外線の量を軽減でき、劣化の進行を遅らせることが可能となります。
真夏の直射日光を遮ることもできます。
夏の日差しは強く、室内に直接入ることで高温となり、暑さに加えて家具や壁などの早期の劣化へと繋がってしまいます。逆に真冬は日光を取り入れることで部屋が暖かくなるため、夏と冬の日射角度に合わせた庇を取り付けることで、部屋の温度調整に繋がります。
雨やホコリによる汚れを防止してくれる役割もあります。窓や玄関は常に外気に触れている場所であり、雨やホコリだけではなく、雨で外壁の汚れも一緒に流れ落ちてくることから非常に汚れやすい場所です。庇があることで、外壁の流れ落ちてくる汚れからも防止でき、雨からの汚れも防ぎやすくなります。
これだけのメリットがある庇ですが、築年数と共に経年劣化をしていくと、雨漏りを引き起こす原因となることがあります。
庇自体にも外壁などとの接合部分にコーキングが使用されているため、コーキングの劣化からひび割れや剥がれなどが起こると、隙間から雨水が徐々に浸入していき雨漏りへと繋がってしまいます。庇の内部に雨水が長時間溜まった状態が続くことで、庇自体が腐食する可能性もあります。屋根に比べると庇の勾配は少ないため、雨水の排水性が高くないことが1つの原因としてあげられます。庇からの雨漏りは、雨水が外壁と内壁の間に染みていくという厄介な特徴があり、目に見えないことから内部にカビが生えてしまったり、腐食が起こる可能性も考えられ、雨漏りとして室内の壁などに表れたときには、様々な部分の状態がかなり悪くなっている場合もあり得ます。
なかなか発見しづらい場所だからこそ、庇の点検やメンテナンスを怠らないことが大切となってきます。
実際問題、かなり状態が悪くなってから専門業者に修理を依頼する方が多いのが現状です。庇の上部は、ご自身で見る機会が少ない場所だからこそ、専門業者による定期的な点検が必要です。雨漏りが起こることに加え、庇自体の傷みも激しく状態も悪くなってしまえば、新しいものへと交換する必要が出てくるため工事費用もかさんでしまいます。
雨漏りが起こっているけれど、庇と外壁のコーキングはそこまで悪い状態ではないということもあり、庇自体の劣化が原因で雨漏りが起こる場合もあります。
庇には板金が使用されていますが、経年劣化により本来の機能が失われると、錆が発生し穴が開いてしまいます。穴や隙間から雨水が浸入し腐食が起こると、庇が崩れ落ちる可能性もあるため大変危険です。塗装により錆から守ることもできるため、屋根や外壁の塗装の際は庇の塗装も忘れないようにすることが大切です。庇の塗装メンテナンスは、劣化症状や酷い傷みが見られない場合でも10年に一度は行うようにしましょう。
庇のメリットから、昔はほとんどの住宅に設置されていました。
雨漏りのリスクを考えると設置しない方が良いのではないかと感じると思いますが、住宅にとって大切な役割を持つ庇は、点検やメンテナンスをきちんと行えば非常に便利な役割を持っているため、戸建てを建てる際にはぜひ検討してみてください。
また、新築でなくとも、庇を後付けすることは可能です。
近年は色々な素材の庇があり、住宅の雰囲気や好みに合った庇を選ぶことも可能です。角度や長さを調整できる布タイプのものもあり、カフェなどで多く見られます。台風などの大雨や強風時には折り畳むことができるため、安心ですがその分メンテナンスはしっかりと行う必要があります。庇を取り付ける場合は、メリットデメリットを詳しく理解した上で取り付けるようにしましょう。後付けの場合は特にコーキングの施工技術が必要なため、実績のある業者を選びましょう。