近年、巨大台風が毎年のように日本列島を襲い、季節かまわず豪雨災害に悩まされています。雨漏りや浸水が心配になる方も少なくないでしょう。築年数経過と共にその心配も増してきます。気付かないうちに天井にシミができていたり、サッシの端が濡れていたら雨漏りの印かもしれません。
雨漏りの診断はとても難しく、シミの正体が雨漏りによるものかどうなのか、NPO法人雨漏り鑑定士協会の考え方「基本5原則」を示しながら説明します。
●「基本5原則」とは
●雨漏りを無くすのは施主次第
●散水試験と赤外線カメラ診断
雨漏り診断「基本5原則」とは
第1原則 「現状を正確に把握する」
①建物の構造の確認
木造、2×4、パネル、RC造、SRC造、S造
②工法の確認
外壁・屋上・ベランダ・シーリング他各部位の工法と材質を確認する。
③築年数
経年劣化を視野に入れて判断する。
④修繕履歴
新築からの修繕箇所やリフォーム工事、増改築などを正確に把握する必要がある。
⑤環境の把握
周辺環境・地理的傾向を把握し、自然災害の履歴も確認する。
第2原則 「入居者に対し、問診を徹底する」
①雨漏り発生個所の正確な把握
②雨漏りの時期と履歴
③雨漏り時の気象状況
雨の強さと降雨量、風の強さと風向き、タイムラグ(気象状況の発生から雨漏りまでの時間など)
④雨漏りの状況
漏水量、漏水のスピード、漏水の色
第3原則 「多くの仮説を立てる」
①原因となりうるすべての箇所の仮説を立てる
②あらゆる可能性を排除せずに仮説を立てる
第4原則 「冷静な観察をする」
①雨水が侵入する入り口側の目視と触診
目地シーリングの状態
建具まわりシーリングの状態
防水劣化の状態
外壁劣化の状態
ドレンの状態
外壁貫通部・換気口まわりの状態
配管配線の貫通部の状態
第5原則 「水は上から下に流れる」
①雨漏り現象があるならば、必ず浸入口がある
②遠い場所より近い場所の方が浸入の可能性が高い
③毛細管現象の可能性もある
④建物内外の気圧差の可能性もある
⑤結露の可能性もある
雨漏り診断はたいへん難しいのです。
散水試験によって雨水浸入口のすべてを的確に見つけることが肝心ですが、補修工事を進めながら何度か再発を繰り返して、やっと止めることができる場合も多くあります。
雨漏りを無くすのは施主次第
雨漏りのクレームを受けて、はじめて雨漏り対応業者は出動します。
雨漏り箇所の確認やその時の気象状況などの聞き取りをした後、実際に散水試験を実施し雨漏りを再現します。再現により実際の雨水浸入口を証明しなければなりません。
雨水の侵入口を見つけることがその後の生命線となるのです。
苦労の末に見つけた雨水浸入口をふさぐために、対処しなければなりませんが、その前に見積書の作成が必須です。
しかし、浸入口を剥がしてみると想像以上に傷んでいたり、反対に軽い場合もあり、やってみないと分からない部分が多いのも事実です。このような状況があることを施主に対して十分な説明をすることが必要です。
工事後の保証をつけるのか、安いコストでとりあえず雨漏りを止めるのか、どのようなアドバイスができるのかになります。
完全に直す場合もシーリングのみの施工で終わらせる場合も、入居者である施主のみに選択の権限があるのです。
散水試験と赤外線カメラ診断
サーモグラフィーカメラは赤外線カメラのことで、温度差を色で可視化します。
雨漏りなどで濡れて温度が下がっている部分を見分けることが可能です。散水試験により水が浸出し温度差が生まれると写真として明確に提示できます。
実際にその個所を目で見ることができる「散水試験報告書」の作成は説得力があります。
散水試験を行わない場合は、実際の浸入口も特定できず、温度差も生じない為、赤外線カメラでの感知もできません。
散水試験に赤外線カメラを導入することで、早期の雨漏り浸入口の特定ができるのです。
まとめ
雨漏りの特定・診断はたいへん難しいために「基本5原則」の考え方が適用されています。
雨漏りを発見したら対処業者に連絡を取りますが、適切な判断と明確な見積もりで入居者である施主が納得しなければ良い工事もできません。
業者の真摯な対応と施主の納得によって、大事な家屋の維持が保てるのですね。