建物の劣化は、雨漏りやシロアリ被害が大きいと考えていたのですが・・・
いろいろと調べていたら「腐朽菌」なる言葉が出てきました。“ふきゅうきん”と読むのですが、短期間に木材だけではなく、釘やアンカーなど建築資材に使われている金物も、ボロボロに腐らせてしまうらしいのです。
きっと、腐朽菌の被害がでるのには、それなりの原因があって、対策もあるはずですよ。
今回は、「腐朽菌」について、みていきましょう。
「腐朽菌」って何?
「腐朽菌」の文字をその通りに理解すれば、「腐らせて朽ちさせる細菌」となります。
木材の主成分であるセルロース(繊維素)、リグニン(木質素)などを分解し、おもな栄養源として成長する菌をいいます。木の栄養を利用して成長する点では、キノコ(椎茸、なめこ、えのきなど)も腐朽菌の仲間であり、私達の身近な存在になります。
木材は、陸地上で多く蓄積されている、もっとも分解しにくい有機物のですが、腐朽菌による腐朽分解があるからこそ、栄養豊富な土に変わっていくのです。
しかし、木造住宅の多い日本の建物にとっては、短時間に腐食させて家の強度を落としてしまう大敵になっています。
キノコの種類があるように、「腐朽菌」にも種類があります。
住まいに悪影響を及ぼすのは、「褐色腐朽菌」と「白色腐朽菌」に分けられます。
なぜ、金物まで腐ってしまうの?
新築住宅であっても、何らかの原因で雨水の浸入や結露による水分の補給があって、木材の含水率が高くなると、木材の腐朽が見られるようになります。
腐朽菌は木材のセルロースを溶かして、有機酸の一種である「シュウ酸」を含む成分を分泌します。これにより、腐朽菌が活性化した木材には、酸が多く含まれることになります。
木材に取り付けた金物が、その酸に溶かされて腐食するのです。
土台のアンカーは、主要構造部と基礎を結合する重要な役目をしていますが、腐朽菌は、土台材とアンカーボルトの両方を同時に劣化させてしまいます。
土台材を劣化させる菌の代表は、「軟腐朽菌」に分類される「褐色腐朽菌」で、含水率25%程度を好みますが、河川に打ちこまれた杭を腐朽させるのは、含水率35%超の環境を好む「軟腐朽菌」になります。
高断熱が活性化させる
最近よく見られる軟腐朽菌被害は、土台の含水率が高くなり周囲が結露することが原因です。
木材と金属・コンクリートは相性が悪いと言われるのですが、その理由はというと・・・
金属は熱伝導率が高く、水分を吸収しないので、湿気の多い日に気温が下がると表面が結露します。発生した結露水を周囲の土台材が吸い込むことで、木材の含水率が高くなります。木材のほとんどに腐朽菌の菌糸が存在しているので、含水率などの条件が合うと腐朽菌は活性化されるのです。活性化した菌の分泌物(シュウ酸)は、金属を腐食していきます。土台周辺の劣化は、こうした悪循環が原因となっているのです。
断熱材を施していないところでは、季節や気候の変化により濡れたり乾いたりを繰り返して、腐朽菌の活動を限定することができますが、高断熱材を使っていると乾燥することが少なく、含水率は下がりません。そのため、通常10年から20年程度機能を保つアンカーボルトの寿命は、かつてよりはるかに短くなっていると考えられるのです。
「腐朽菌」の繁殖を抑える
軟腐朽菌が繁殖するほど木材の含水率を高めるのは、極力避けるべきですが、金属やコンクリートを併用する限り、結露による含水率上昇を避けるのは難しい問題です。
まずは、木材とそれ以外の素材の接触部分を、丈夫な部品でしっかりと立ち切る必要がありますが、防水シートを掛けるだけでは、重さに耐えられずに敗れる恐れがあります。
何らかの方法でアンカーボルトを被覆して、土台との縁を切るべきなのです。
それでも、雨仕舞いや結露によって木材の湿気は起こりえますから、常に木材が乾いた状態になるような工夫が欠かせなくなります。
木材の性質上、濡れれば水を吸い上げて、乾けば全体から放湿しますから、一辺でも常に乾いていれば含水率の上昇を食い止めることが可能になります。
木材を使う上では、「どうしたら乾くか」を考えることが重要なのです。
まとめ
湿気の多い森の倒木に、平たいヒダのようなキノコを見ることがあります。サルノコシカケもその一種ですが、建物の木材部にキノコの菌糸があって、含水量によっては土台から朽ちてしまうとは驚きです。ましてや、金属まで腐らせてしまうのですよ。
海の近くで自転車が錆びてしまうのとは、訳が違いますよね。
私達に出来ることは、湿気や結露を感じたら乾燥させること、異常を見つけたら早期の点検修理をすることですね。
家にキノコが生えないことを願うばかりです・・・