雨水による被害から家を守るために、昔から色々な工夫がされてきました。
様々な経験から、暮らしの知恵として住宅に対する雨水の処理を施すことを建築用語で雨仕舞いといいます。
建物を長く保たせるためには、雨水からの被害を防ぐことが最も重要です。
雨仕舞いは、雨漏りする可能性が高い部分である屋根や外壁、窓のサッシやベランダなどに施行されています。
これだけを聞くと、雨仕舞いを防水処理と勘違いしてしまう方も多いと思いますが、雨仕舞いと防水は全く別物です。
雨仕舞いは、建物の部材が雨水による被害をなるべく受けないように、雨水が適切に流れるための方法として考えられたもののことです。
屋根でいえば、雨樋がなければ降ってきた雨水は四方八方に流れ落ち、それにより外壁が落ちた雨水による泥はねなどで汚れたり、雨水が屋根から外壁に流れ放題になることで劣化のスピードを早めるといったことが起こってしまいます。そういった不具合を防ぐために雨樋が設置され、雨水が適切に処理されています。
このように、雨水の流れを知り得た昔の人の知恵が雨仕舞いなのです。
防水はこういった考えとは違い、雨水の流れを左右するものではなく、雨水に濡れても雨水を浸透させないようにすることが目的とされています。ですので、雨水で濡れる前提である部分や濡れる可能性がある部分に防水処理は施されます。
何もなかった時代に自然の現象を知り得た昔の方々の知恵と工夫が、雨仕舞いとして現代に受け継がれているのです。
時に、雨仕舞いが機能しなくなる場合があります。
台風などの暴風により破損してしまったり、経年劣化などで傷んでいる場合は、本来の雨仕舞いの機能を果たせないこともあります。
防水処理がされているから大丈夫だと思っていた所でも、雨水が多く当たれば経年劣化のスピードは早くなってしまいます。
雨仕舞いが施された建物は、その機能を充分に発揮させることで建物の寿命が長くなることに繋がるので、定期的な点検とメンテナンスをしっかりと行うことが重要です。
雨仕舞いが施されているから安心というわけではなく、施工した業者の技量が最も左右するものですので、新築であっても後付けで施工する場合であっても、きちんと信頼と実績のある業者を選ぶことが大切です。
雨仕舞いがきちんと施されていない場合、雨漏りが早期に発生してしまう可能性があります。
建物の中で1番雨漏りに注意しなければならないのが、取り合いや立ち上がりと呼ばれる部分です。
取り合いとは、異なる部材と部材が結合されている部分のことであり、例えば屋根と外壁の結合部分や外壁とベランダの結合部分が取り合いにあたります。
結合部分がL字型になっていたり角度に違いがある部分は、どうしても雨水が溜まってしまいます。雨水が長い時間溜まった状態になることは、部材の劣化を早めてしまい、そこから雨漏りへと繋がってしまいます。
不具合が起こらないように、雨仕舞いでは雨水の流れをコントロールする水切り金具というものを使用します。
サビに強く水が染み込まない素材で、雨水が溜まらないように流れをコントロールします。水切り金具の下には防水シートを使用しているため、万が一の時でも水の浸入から守ってくれます。
水切り金具や防水シートの設置には、隙間ができないようにシーリング材が使用されます。このシーリング材は、1度施せば永久というわけではなく、経年劣化により剥がれやひび割れが起こるため、定期的な点検が必要となります。また、雨仕舞いに不具合が起きた場合、火災保険を使用し無料で修理が行える可能性もあります。破損原因が自然災害によるものの場合、火災保険の対象となることがあるので、御自身の加入されている保険会社に確認をしておきましょう。
雨漏りの発生原因として、防水シートの劣化が原因と思いがちですが、実際には雨仕舞いの施工不良が原因であることが多いです。
雨仕舞いがきちんと施工されていないと、雨水が適切に流れていないということになります。施工不良により、雨水がかかり放題になっている可能性があり、そのため雨仕舞いの本来持つ機能が発揮されていないことが考えられます。
雨漏りの発生をきちんと防ぐには、雨水の流れを熟知している必要があります。起きてしまっている雨漏りを修理する場合にも、雨水の流れや雨仕舞いについて、知識が豊富であることに加え実績がある業者を選ぶことが最も大切です。雨漏りが発生するかしないかは、ほぼほぼ施工業者の施工技術にかかっていると言ってもよいでしょう。
建物にとって、雨仕舞いはとても重要な役割があることがわかったと思います。
雨漏りが起きることは、建物にとって寿命を縮めてしまうとても厄介なことですので、雨漏りが起こらない、起こさせないようにすることがとても大切です。雨仕舞いの知識を取り入れることで、失敗のない業者選びの参考にして頂ければ幸いです。