テレビでニュースや天気予報を見ているとたまに出てくる「エルニーニョ現象」。
番組の中でアナウンサーや気象予報士が「今年はエルニーニョ現象が発生しているので、梅雨が長引きそうですね…」、「気候の変化や台風にも注意が必要です…」などと言っているのを耳にしたことがある人は多いと思いますが、このエルニーニョ現象について知っている人はなかなかいないのではないでしょうか。
エルニーニョ現象は、日本のみならず、世界中の天候に影響を与えるほど大きな現象なのです。
今回は、この「エルニーニョ現象」について、どこよりも簡単に、そして私たちにとっては一番気になる日本への影響について紹介します。
エルニーニョ現象とは
エルニーニョ現象とは、年間を通して太平洋の東側(南米付近)の海水温が例年より高くなる現象のことです。
天候のことなのに海水の温度が関係しているの?と思われるかもしれませんが、海水温と天候は密接に関係しています。
エルニーニョ現象を解説する上で、まず知って欲しいのが、太平洋の熱帯域を常に吹いている東風の「貿易風」です。
<通常時>
普段はこの貿易風が東から西へ吹いているので、海面付近の暖かい海水は西側へ集まっていきます。また東側では冷たい海水が海底から湧き上がってくるので、暖かい海水は西側へ流れていき、冷たい海水は東側にとどまります。
この暖かいのと、冷たい海水温の違いが、エルニーニョ現象のポイントです。
西側へ流れた暖かい海水は、海面の水温が高くなることで、蒸発し積乱雲を発生させます。
積乱雲の発生により付近には多くの雨をもたらすとともに、太平洋高気圧が北へ張り出すことで西から東に吹いている「偏西風」も北へ押し上げられます。
この偏西風が北へ押し上げられることで、日本には暑い夏がやってきます。
<エルニーニョ現象>
エルニーニョ現象が発生しているときは、例年よりも貿易風が弱いことで本来西側に流れるはずの暖められた海水が普段よりも東側に留まるため、積乱雲の発生位置が変わってしまいます。
それにより、大気の循環がうまくいかず、偏西風を北へ押し上げる力も弱まり、日本では梅雨が長引いたり、冷夏になったりするなど、天候や気温に影響が出ます。
もちろんその影響は、日本だけでなく、長雨が続くことによる洪水などさまざまな形で世界中に現れます。
また、エルニーニョ現象とは逆で、普段よりも積乱雲の発生位置が西側になる現象を「ラニーニャ現象」と呼びます。
エルニーニョ現象の原因、台風との関係は?
エルニーニョ現象は、今でも数年に一度のペースで定期的に発生しています。それでは、なぜエルニーニョ現象が起きるのでしょうか?
前述の通り、エルニーニョ現象の原因は、東から西へと吹く貿易風が例年よりも弱まることだと言われていますが、なぜ貿易風が弱まったり強まったりするのか?についてはいまだはっきりした理由が分かっていません。
現在では、大気と海面状態のバランスが重要な要素であることは分かっているので、気象庁では、「エルニーニョ監視速報」として毎月10日頃に熱帯域の海洋変動情報を発信しています。
また、エルニーニョ現象というと、台風を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「エルニーニョ現象が発生している年は台風が多い」と連想しがちですが、それは大きな間違いです。
エルニーニョ現象発生時は、積乱雲の発生場所が変わる関係で、台風は例年より少なくなる傾向があります。
では、なぜエルニーニョ現象という言葉から台風を思い浮かべる人が多いのでしょうか。
それは、エルニーニョ現象発生時の台風が、例年よりも中心気圧が低くて強く、寿命が長い傾向にあるため、甚大な被害をもたらすことが理由として考えられます。
エルニーニョ現象による日本への影響
エルニーニョ現象が発生すると、私たちの住む日本ではどのような影響を受けるのでしょうか。
直接的な影響として、以下の2つがあります。
- 大気の循環がうまく働かないことにより夏は冷夏に、冬は暖冬になる
- 梅雨が長引く(終わりがはっきりしない)
このような状況になると、私たちの生活だけでなくさまざまな産業が影響を受けます。
漁業
海水温に変化が生じることで、季節ごとに獲れるはずの魚が全く獲れなくなってしまったり、別の魚しか捕れないなど、多大な影響があります。
また有名な話として、エルニーニョ現象が発生するとペルー沖合いで毎年大量に獲れるカタクチイワシが全くいなくなってしまい、カタクチイワシを原料とするアンチョビが手に入りにくくなってしまうので、世界中のイタリア料理店にも影響が出てしまうというエピソードもあります。
農業
農業もエルニーニョ現象の影響が大きい産業の一つです。
例年と異なる天候や気温により作物が成長せず、売り物にならないなど、農家にとっては死活問題となる場合もあります。また作物の不足による値段の高騰が、私たちの日常生活にも影響を及ぼします。
飲食業
暑い夏に向けたカキ氷や寒い冬にこそ食べたいお鍋など季節に合わせた商品が冷夏、暖冬の影響により、消費者の購買意欲が低下し、売上に多大な影響を及ぼしてしまうケースもあります。
このようにエルニーニョ現象による影響は、ただの異常気象ということではなく、さまざまな産業に大幅な負荷が掛かり、私たちの日常生活にも大きな影響を及ぼします。
2020年、日本の冬はどうなる?
気象庁によると、近年は以下の通りエルニーニョ現象とラニーニャ現象が交互に発生しています。
2009年夏〜2010年春:エルニーニョ現象
2010年夏〜2011年春:ラニーニャ現象
2014年夏〜2016年春:エルニーニョ現象
2017年秋〜2018年春:ラニーニャ現象
2018年秋〜2019年春:エルニーニョ現象
では、これからの時期はどうなるのでしょうか?
気象庁が2020年10月9日に発表した「エルニーニョ監視速報」によると、今年は夏からラニーニャ現象が発生しているとみられ、冬にかけてこのままラニーニャ現象が続く可能性が高いという見通しでした。
ラニーニャ現象が発生すると、日本ではいつもの冬よりも厳しい寒さで、大雪になる可能性が高まります。
冬の寒さが厳しい日本海側の地域の方だけではなく、普段雪に不慣れな地域の方も今のうちから雪や寒さへの備えをしておく必要があるかもしれませんね。 冷夏や暑夏、暖冬や寒冬など、年によって季節の傾向が異なります。 こうした背景には季節ごとに日本に近づく気圧や上空の風が大きく影響しています。 天気予報やニュースで「エルニーニョ現象」「ラニーニャ現象」 ...
ラニーニャ現象とは?日本への影響や台風との関係性、2020年の冬は寒くなる?
今年の冬は寒さ対策・雪の対策を入念に!
ラニーニャ現象の影響で、今年の冬は厳しい寒さになることが見込まれます。
例年より積雪も多くなる可能性があるため、家の雪対策などもしっかりしておくと良いでしょう。
特に、日ごろ雪の降ることが少ない地域ではまれに降るどか雪によって事故やトラブルが発生しがちです。
今からできる雪対策を検討してみてはいかがでしょうか。