山梨県には富士五湖(ふじごこ)という湖があります
山梨県には富士五湖(ふじごこ)という湖がありますが、この呼び名は、富士急グループの創始者である堀内良平氏が、昭和2(1927)年に観光PRのために命名したものであることがわかっています。富士山の麓にある山中湖(やまなかこ)・河口湖(かわぐちこ)・西湖(さいこ)・精進湖(しょうじこ)・本栖湖(もとすこ)の5つの湖を一括したもののことを言います。それぞれの湖が観光名所となっており、中でも河口湖は旅行客が多く知名度も高くなっています。この5つの湖は多くの方がご存知だと思いますが、実は富士五湖のそばには、もう1つ赤池と呼ばれる湖が存在します。赤池は不思議な湖で、滅多に姿を現さないことから、多くの謎をよんでいました。今回この赤池について見ていきたいと思います。
赤池は6つ目の湖ということで、富士六湖
赤池は6つ目の湖ということで、富士六湖とも呼ばれ、富士河口湖町の精進湖から東に約1キロのところに存在していますが、普段は水が一切なく、山の中の普通のくぼんだ土地であるため、ここが湖であるとは誰も気づかないほどです。このエリアは赤池キャンプ場があり、普段はキャンプを楽しむ人々で溢れています。ですが、何らかの条件が揃ったときにだけ、このくぼんだ場所に水が溜まり、赤池と呼ばれる湖が現れるのです。なぜ赤池が突然現れるのかは、はっきりとは解明されておらず、色々な説がありましたが、なかなか科学的根拠に繋がるものは示されていませんでした。有力な説の中では、赤池は精進湖の水位が上昇したときに現れるということから、赤池は地下の深いところで精進湖と繋がっているのではないかと考えられています。それは何故かと言うと、そもそも西湖、精進湖、本栖湖は、石花海(せのうみ)という湖が、富士山の溶岩流により3つの湖に分断されてできたものであるため、この3つの湖は地下の深いところで繋がっていると言われてきたからです。そのため、大雨や長雨などにより精進湖の水かさが増したときに、その水が繋がっているであろう地下を通り、赤池に湧き出て幻の湖が姿を現すと考えられてきました。富士山の周辺は、スコリアという水を通しやすい地質であることも、これらの考えに大きく繋がっています。
1994年の富士山の謎:ニッポン不思議発見3によりますと、赤池という名は、池が浅く、湖底を埋めた赤い溶岩から名づけられたと思われると記載があります。
これまで過去に赤池が姿を現したのは、1980年以降の記録しかなく、それ以前にも姿を現していたとされていますが
これまで過去に赤池が姿を現したのは、1980年以降の記録しかなく、それ以前にも姿を現していたとされていますが、データとして残っているのは、昭和57(1982)年に出現したとの記録が残っています。翌年の昭和58(1983)年、平成元年(1989)、平成3(1991)年、平成10(1998)年、平成16(2004)年、平成23(2011)年、令和2(2020)年、令和3(2021)年に姿を現しており、謎は深まる一方でしたが、2020年の7月に姿を現した際に、山梨県富士山科学研究所が赤池の水を採取し、水質の調査を進めていました。その結果、赤池の水の主な成分は雨であるという結果が出たのです。精進湖の水とは明らかに異なる成分であることから、今までの説を一気に覆す形となり、赤池の水は、カルシウムイオンや重炭酸イオンの濃度が低かったこと、地下に浸透することなく短期間で赤池に流出していたことからも、精進湖からの湧き水ではないことが伺える結果となりました。
このことから西湖、精進湖、本栖湖の3つの湖が地下で繋がっているとされる説も変化していくのでしょうか。この3つの湖は、水面の標高が同じであるということもあり、地下で繋がっていないとなると、それはそれで不思議な現象であるという謎が生まれます。富士五湖とされていますが、富士五湖の名が浸透する前までは、富士八湖が一般的でした。五湖以外にも湖はあり、昔の人々は湖を海と表し、富士八海として名が通っていました。赤池については謎の多い現象ですが、この先もさらに調査が進めば、色んな謎が解けていくのかもしれません。
2021年の調査結果により、科学的根拠として赤池は精進湖から繋がった湧き水ではないとされましたが、一概に地下で絶対に繋がっていないとは言いきれないのではないでしょうか。雨水により赤池が薄まったという可能性も0%ではないのかなとも考えられます。
いずれにせよ、大雨がもたらした不思議な現象であるということは明確で、この先も赤池が現れることがあれば、さらに深く調査が進むことでしょう。大雨や長雨などにより、毎回顔を出すわけではない赤池ですので、次はいつ現れるのかはわかりませんが、一度自分の目で見てみたいという方も多く、姿が現れた際には赤池まで足を運ぶ人も多いようです。赤池は、グリーンががった色に見えるそうで、雨の季節になるとまた姿を現すのか気になるところですね。