時雨(しぐれ)という文字を目にしたことがある方は多いと思いますが、日常生活でしぐれ煮ではなく時雨というこの言葉を使用することはなかなか無いと思います。
時雨とは、日本の冬の季語であり、季語の中には時雨が入った言葉が数多くあります。そもそも季語とは、俳句にはなくてはならない言葉であり、5・7・5で表す文字の中に季語をひとつ入れることが必須です。季語の数はおよそ8000個あると言われており、歳時記という書物にまとめてあります。
たくさんある季語の中から、冬の季語である時雨が入った季語から雨にまつわる季語までをご紹介したいと思います。それぞれの季語から思い浮かぶ情景を楽しんでみてください。
時雨(しぐれ)…秋の末から冬の初めごろに、降ったりやんだりを繰り返す小雨のことです。
初時雨(はつしぐれ)… その年の冬になってはじめて降る時雨のことです。
時雨傘(しぐれがさ)…時雨が降る中で傘をさすことです。
時雨癖(しぐれぐせ)…時雨の時期に、癖がついたように降る回数や日数が多くなることです。
時雨雲(しぐれぐも)…時雨を降らす雲のことです。
村時雨(むらしぐれ)…いっとき激しく降っては、通り過ぎていく時雨のことです。叢時雨・群時雨とも書きます。
朝時雨(あさしぐれ)…朝に降る時雨のことです。
夕時雨(ゆうしぐれ)…夕方に降る時雨のことです。
片時雨(かたしぐれ)…片方の空から時雨が降り、もう片方では日がさしているような状態のことです。
小夜時雨(さよしぐれ)…夜に降る時雨のことです。
横時雨(よこしぐれ)…風に吹かれ、横から吹き付けるように降る時雨のことです。
北時雨(きたしぐれ)…北の方角から降ってくる時雨のこと。または北風にのってくる時雨のことです。
山時雨(やましぐれ)…山に降る時雨。 冬支度を終えた山が時雨ることです。
北山時雨(きたやましぐれ)…北の方の山から降ってくる時雨のこと。特に京都の北山あたりから降る時雨をさしています。
山茶花時雨(さざんかしぐれ)…山茶花が咲くころに降る時雨のことです。
めぐる時雨(めぐるしぐれ)…連峰の山々にあたって向こう側に雨を降らせた雲が、山越えをしてこちら側も時雨ることです。
雪時雨(ゆきしぐれ)…時雨ている時に気温が低くなり、いつのまにか雪混じりとなることです。
他に、似物(にせもの)の時雨として、雨ではなく別のものを時雨と音として表した季語もあります。
涙の時雨(なみだのしぐれ)…涙に濡れるようすを時雨に見立てた言い回しのことです。
袖時雨(そでしぐれ)…悲しみの涙が流れて袖に落ちるのを時雨に見立てた言い回しのことです。
松風の時雨(まつかぜのしぐれ)…松風を時雨の音に見立てたことばです。
木の葉の時雨(このはのしぐれ)…木の葉の落ちる音を時雨の音に見立てたことばです。
川音の時雨(かわおとのしぐれ)…川音を時雨の音と聞きなしたことばです。
袂の時雨(たもとのしぐれ)…涙に濡れるさまを時雨に見立てた言い回しのことです。
冬の季語には、雨や雪をあらわした季語が他にもあり、冬の冷たい雨の様子が目に浮かびます。
氷雨(ひさめ)…空から降ってくる氷の粒のこと。または、冬に降る凍るように冷たい雨のことです。
雨氷(うひょう)…極端に冷たい霧雨が木の葉や枝などに降り注ぎ、それが凍ってガラス細工のように見えることです。
凍雨(とうう)…冬の季節に降る氷のように冷たい雨のことです。
霙(みぞれ)…雨雪が混じって降ることです。
寒九の雨(かんくのあめ)…寒の入りから9日目に降る雨のことです。
寒の雨(かんのあめ)…冬の寒さが1番厳しい寒の時期に降る冷たい雨のことです。
水雪(みずゆき)…水分をたくさん含んだ雨混じりの雪のことです。
雪雑り(ゆきまじり)…雪まじりの雨、みぞれのことです。
冬至雨(とうじあめ) …冬至の日に降る雨のこと。冬至は、二十四節気のひとつで、12月22日ごろのことをいいます。
雪風巻(ゆきしまき)…降っている粉雪が、強風にあおられる状態のことを言います。吹雪のように視界が悪く、車の運転にも支障をきたすほどですが、吹雪以上に風の強さが感じられる季語です。
今回、時雨を主に紹介しましたが、他にも数多くある季語を知ることで、俳句の見方が変わるのではないかと思います。
季語から見える日本の素敵な四季の移り変わりを感じられることで、思い浮かぶ情景や色などを楽しめるのではないでしょうか。冬の季語からは、寒さを感じるような冷たい雨や雪が降る情景が浮かぶことが多いと思いますが、雨や雪関連以外にも季語はたくさんあり、同じ冬でも全く違う様々な色や顔があることがわかると思います。
冬の季語を使う時期は、立冬から立春の前日までとなり、その年にもよりますが、11月8日頃から2月3日頃までの間となります。秋も終わりに近づき冬がはじまる頃から、年末年始を過ぎて新たな年を迎え、そして冬の終わりが見えてくるころまで、日本の冬を存分に感じられることでしょう。ご興味がある方は歳時記をぜひ手に取ってみてくださいね。