雨と言えば梅雨を思い浮かべると思いますが、春も雨が多く降る時期があります。
冬の寒さから春の暖かさへと移行する季節の移り変わりの時期は雨や風が吹き荒れることもあります。
春ならではの気候から、桜をはじめとした綺麗な花がたくさん咲くこの季節は、雨が花に降りかかる情景や雨の風景など、日本人独特の感性で雨の名前や様々な言葉で表現されています。そんな春の雨や風を題材とした歌が日本にはいくつかあります。その中から心に残る切ない春の歌をご紹介します。
桜の雨 いつか…松たか子
この歌は2000年2月9日に発売された松たか子さん作詞の曲です。歌詞を読んでいくと、恋人への気持ちや様々な別れに対しての想いを描いているかと思うような内容ですが、実際の内容は、松さんが亡くなった祖母への気持ちを描いた歌詞のようです。こぼれてゆく涙を桜の雨として表現している描写がとても切なく、情景が目に浮かぶようです。
寂しさの中に春を感じられ、自分の人生と重ねて聞くと、別れた人達を思い出し涙がこぼれそうですが、前を向いて行こうとあたたかい気持ちになります。松たか子さんの声が心地よく、素敵な曲だと感じます。ご興味があればぜひ聞いてほしい1曲です。
桜雨…JUJU
この曲は2010年に発売されたJUJUさんの曲です。失恋を描いた歌詞の内容の中に、春の花である桜を背景とした雨の模様が描かれています。
桜雨の存在を大きく表現した歌詞の中には、涙を隠す桜雨、ふたり街を塗り替え足跡を洗い流す桜雨、口笛の音を消し去る桜雨として違う役割で登場しています。
春になると桜や綺麗な花がたくさん咲き、街並みも人々が多くなる様子を、歌詞の中では色づく街並みとざわめく人たちと表現されています。
夢へ向かう中で手に入れたものと、なくした恋人だった人への想いとの狭間で、気持ちを断ち切りたいけど、ふたりの歩んだ思い出に浸りながら涙する、そんな想いの詰まった涙を桜雨で表現しているような気がします。
日本では、春は別れもあり新たな出会いが始まる季節でもあります。
そこに必ず登場する春を彩る桜の存在は、私たちにとって特別な存在だと思います。そんな桜に降り注ぐ雨である桜雨は、桜にとっては大敵で、綺麗な桃色の花びらは心を癒してくれるはずなのに、ちょっとしたことで散ってしまう様がとても儚く、恋愛模様や人と人との出会いと別れに通じるものがあるのではないかと感じます。桜に降り注ぐ雨はなぜか切なく、思い出に涙するそんな季節でもあるような気がします。
日本には、他にも春の雨や風を題材とした素敵なうたが存在します。出会いと別れの季節に浸りながら、新たな気持ちへと切り替える後押しになるかもしれません。ご興味があればぜひ聞いてみてください。
冬から春へと季節が移り変わる頃は、北高型と呼ばれる気圧配置により、高気圧が北日本に、低気圧が南の海上に現れます。
この気圧配置により長雨が続くことを春霖と呼び、霖という言葉には3日以上も続けて降る雨という意味があります。
春を付けると春の長雨となり、菜の花の時期でもあることから菜種梅雨とも呼ばれています。春は様々な花が咲く頃でもあることから、菜の花以外にも桃の花が咲く頃に降る雨は、桃花(とうか)の雨と呼ばれ、この呼び名は静かに降る雨のことを指しています。杏の花が咲く頃に降る雨は杏花雨(きょうかう)と呼び、このように、季節が進んでいくにつれて咲く花が変化していくと、雨の呼び名も変わっていきます。
春といえば桜、桜の花が咲く頃に降る雨を桜雨と呼び、他には華雨(かう)と呼ばれることもあります。古くから、雨の呼び名を用いて万葉集の歌が読まれたり俳句にも多く使用されており、現代の歌の歌詞にも多く用いられるほど春の雨の呼び名は印象的なものが多いです。特に桜にかかる雨は、現代の歌であれば情景が浮かぶことで感情移入しやすく、桜の桃色の優しい印象から明るくもなり、散ってしまう様子が浮かぶと切なくもなるという、不思議な桜と雨の力があります。
2023年は桜の開花が平年よりもかなり早く、4月には散ってしまうところも多いかと思いますが、北日本では4月に満開を迎えるところが多いようですので、桜を楽しみたい方は桜巡りの旅行もおすすめです。3月とは思えない暖かさにより、花の見頃の時期も早まるところが多く、お花見を楽しむ人たちの光景が3月という2023年は、この先の気温も平年より高くなりそうです。
雨の日は気分も沈み、どんよりとした空の色から心も曇りがちになることもあると思いますが、桜を見ながら桜雨や春の雨にまつわる歌を聴き、切ない気分に浸るお花見も悪くないかもしれません。
春しか味わえない綺麗な桜は、天候が良い日も悪い日も、多くの人の心を動かす不思議な力があるようです。
桜雨の他に、春の雨に関する歌はたくさんあるので、ぜひ検索してみてください。