日本で古くから使われている瓦屋根は、50年から長いと100年ほども耐用年数があると言われています。
瓦自体はとても丈夫な素材ですが、瓦屋根の家だからといって雨漏りの油断は禁物です。
瓦屋根を長持ちさせて家を雨漏りから守るためには、適切なメンテナンスをしなければなりません。
今回は、瓦屋根の構造をはじめ、雨漏りする原因や補修の方法などをまとめました。
自己流の雨漏り補修が危険な理由や、気になる修理費用についても詳しく紹介していきます。
こんな方におすすめ
- 瓦屋根から雨漏りして困っている方
- 瓦屋根のメンテナンスを知りたい方
- 瓦屋根の雨漏りの原因を知りたい方
瓦屋根の作りはどうなっている?
まずはじめに、瓦屋根の作りについてご紹介します。
下地と屋根材のつくり
屋根には、骨組みとなる垂木(たるき)があります。その上に、下地の役割をする野地板(のじいた)を貼り、屋根の面を形成しています。
野地板に貼るルーフィングという防水シート(防水紙)は、雨の浸入を防ぐものです。
これらの下地の上に、屋根材である瓦を設置します。基本的に、スレート屋根など他の屋根材の場合でも同様に屋根の下地を作ります。
棟瓦と漆喰(しっくい)
棟瓦(むながわら)とは、屋根の1番高くなっているところを覆う瓦のことです。
瓦はカーブしているので、隙間は漆喰で埋めてあります。漆喰も高温多湿の日本の気候にあった材質ですが、こちらも長持ちさせるために定期的にメンテナンスが必要です。
瓦屋根のメンテナンスについては、後半で詳しく説明していきますね。
瓦の設置方法
瓦屋根には「土葺き工法」と「引掛け桟瓦葺き工法」という2つの工法があります。
土葺き工法
土葺きとは、古くから採用されている瓦屋根の工法です。
野地板の上に杉などの樹皮を貼った上に粘土を乗せて瓦を固定していきます。
土葺きは、瓦と粘土の重量が重くなり、家屋に負担がかかることから近年ではほとんど採用されていません。
目安としては築40年未満の建物では採用されていないと考えて良いでしょう。
引掛け桟瓦葺き工法
引掛け桟瓦葺き工法の場合は、野地板に瓦桟を取り付け、瓦を引っ掛ける方法です。破損した瓦を1枚ごとに補修できるというメリットがあります。
近年は、耐震基準も厳しくなっていることから、重量の軽い引掛け桟瓦葺き工法が主流となっています。
瓦屋根の種類
瓦屋根というと和風建築をイメージする方が多いかもしれませんね。実は、瓦には和瓦(日本瓦)だけでなく、洋瓦も存在します。
和瓦は、粘土を原材料としています。波打つようなカーブの形が特徴的です。
粘土瓦には、渋い印象の「いぶし瓦」や、釉薬のツヤが美しい「釉薬瓦」のほか、成形後、そのまま焼き上げた「素焼き瓦」などがあります。
粘土瓦の最大の特徴は、塗装が不要であるという点です。そのため、塗装メンテナンスのコストを抑えられるというメリットがあります。
また、耐用年数も50年以上と非常に長持ちです。漆喰の補修や、傷んだ瓦の交換をしながら、長期間に渡って維持することができます。
ただし、最近では瓦葺きができる職人さんが減っていると言われています。また、スレートなど他の屋根材に比べると重量があるので、耐震面でのデメリットが考えられます。
洋瓦には、セメント瓦やモニエル瓦(コンクリート瓦の一種)などがあります。洋瓦はS字に波打ったものや、フラットなタイプなど、さまざまな形があり、デザイン性に富んでいます。
セメント瓦やモニエル瓦には、定期的に屋根塗装が必要なだけでなく、漆喰の補修も必要なので、和瓦よりもメンテナンスが必要だといえます。
近年では、同じセメントを原料としたスレートの人気が高まっていることもあり、セメント瓦やモニエル瓦はほとんど製造されていません。
2004年以前に製造されたセメント瓦にはアスベストが含まれているものもあります。モニエル瓦の場合は海外で製造されていましたが、現在では国内に在庫がほとんどないため補修の材料が手に入りづらいことが懸念されます。
材料が手に入りにくいセメント瓦やモニエル瓦は、スレート屋根などにメンテナンスのタイミングで葺き替え工事をするのもおすすめです。
スレート屋根とは?
スレートはセメントを原料とした薄いプレート状の屋根材。軽量でリーズナブルなので導入しやすいというメリットがある。定期的に塗装のメンテナンスが必要で、割れやすいというデメリットもあるが、施工できる業者が多い。
さらに詳しく知りたい方はこちら↓ 家の建築や屋根のリフォームを検討する際に良く聞く「スレート屋根」がどのようなものかご存知でしょうか。 スレート屋根はおしゃれで軽いことから住宅でもよく採用されている屋根材です。 今回のコラムでは、スレ ...
スレート屋根を選ぶ前に確認すべきメリットとデメリットを紹介
すでに雨漏りしているときはプロの業者に相談
瓦屋根が雨漏りする理由
ここまで、瓦屋根の構造や種類について紹介してきました。瓦といっても、さまざまな種類があることがおわかりいただけたでしょうか?
ここからは、瓦屋根で雨漏りが発生する原因を詳しく紹介していきます。
瓦がずれる・割れる
台風や強風によって瓦がずれると、隙間から雨漏りが発生することがあります。また、物が飛んできて瓦が割れたり、瓦が飛ばされてしまったりするケースもあります。
台風の発生時に屋根に登るのは大変危険なので、天候が回復してからプロの業者に点検してもらうようにしましょう。
防水シートの劣化
瓦屋根で雨漏りする原因に、防水シートの劣化も挙げられます。
瓦は耐用年数が50年以上もあるので長寿命ですが、その前に下地の防水シートが劣化してしまうケースが多いのです。
防水シートの耐用年数はアスファルトルーフィングで約20年と言われています。
瓦のずれによる隙間と、防水シートの劣化が同時に起きると、雨漏りのリスクが高くなるので注意してくださいね。
漆喰の劣化
漆喰は瓦の隙間を埋めているもので、屋根の内部に水が入るのを防いでいます。
漆喰は10年〜15年程度で劣化し、欠けやひび割れが見られるようになります。
そうすると、漆喰の下にある葺き土に水が染み込み、雨漏りのリスクも高まってしまうでしょう。
漆喰の劣化は見つけにくいポイントなので、耐用年数が近づいてきたら忘れずに業者に点検してもらうことが大切です。
雨仕舞いの劣化
雨仕舞いとは、建物が受ける雨を適切に排水する機能の総称です。具体的には、雨樋やサッシ、水切り、板金、排水口(ドレン)などが当てはまります。
例えば、雨樋が劣化して折れたり、板金に穴が空いたりするだけでも雨が正常に排水されずに、雨漏りになるリスクが上がります。
葺き土が減る
近年ではあまり見られなくなった土葺き工法の瓦屋根の場合、下地に使っている葺き土が次第に減っていきます。
葺き土が減ることで、瓦屋根がずれる原因にもなり、結果的に雨漏りを招いてしまうかもしれません。
瓦屋根の修理方法
瓦屋根の破損を見つけたら、雨漏りする前に補修しておくと安心です。
ここでは、瓦屋根の応急処置もあわせて紹介していきますが、屋根の上での作業は落下の危険もあるので、プロの業者に修理をお願いしましょう。
プロにお任せ!瓦の修理方法
瓦屋根を10年以上メンテナンスしていない場合は、防水シートや漆喰の劣化が進んでいるかもしれません。
瓦自体が傷んでいないように見えても、雨漏り対策として目に見えない箇所も点検しておくのが大切です。
防水シートの交換
先にも紹介したように、防水シート(ルーフィング)の耐用年数は15年〜20年程度とされています。
防水シートを交換するときには、上に乗っている瓦を一旦撤去して、既存の防水シートも剥がします。
部分的な補修も可能ですが、防水シートのつなぎ目から雨漏りすることもあるので、全て新しいものに取り替える方がよいでしょう。
防水シートには、アスファルトルーフィングの他にも塩ビシートやゴムシートなどもあります。予算や耐用年数に合わせて検討してみてください。
漆喰の補修
瓦の隙間を埋める漆喰は、年月とともに割れたり、欠けたりして劣化していきます。
そのため、定期的に漆喰の埋め直しをおこないましょう。
漆喰を補修するときは、既存の漆喰を全て取り除き、葺き土を湿らせたところに新たに漆喰を埋めていきます。
葺き替え
瓦が広範囲にわたって劣化している場合は、葺き替えも検討してみてください。
なお、既存の瓦を使う場合は葺き直しといい、古い瓦を全て交換する場合は葺き替えといいます。
古い瓦を交換するときには、撤去費用もかかるので50万円〜100万円以上かかるケースもあります。
瓦を葺き替える場合は、いままでと同じ屋根材を選ぶこともありますが、軽量で耐震性に優れたガルバリウム鋼板などの屋根材を選択する人も多くなっているそうです。
瓦の応急処置
瓦の応急処置に必要な道具は、ホームセンターや通販などでも購入することができます。
自分で瓦の応急処置をする場合には、防水テープや瓦パテ、コーキングなどを用意します。
まず、壊れている瓦を取り外し、しっかりと汚れを拭き取ってから補修しましょう。
また、補修した瓦を戻す時には、下地が破損していないか確認することも大切です。
せっかく瓦を補修しても、下地が壊れていると雨漏りの原因になるからです。
防水テープ
ひび割れている箇所に、防水テープを重ね貼りして、元の位置に瓦を戻します。
このとき、他の瓦をずらさないように注意してください。
瓦パテ
ひび割れを埋めるときに使用します。パテがはみ出した部分はきれいに拭き取り、瓦の表面に凸凹ができないように気をつけましょう。
裏面から金属の板を当てておくと、強度の面でも安心です。
コーキング
コーキングは耐水性のあるボンドのような材質です。瓦パテと同じく、ひび割れた隙間を埋めるために使用します。
充填後は固まるのが早いので、手早く表面を整えましょう。
瓦屋根の雨漏り補修でDIYが危険な理由
壊れてしまった瓦が数枚程度であれば、自分で補修したいという方もいるかもしれません。しかし、自分で瓦の補修をすることは、安く済む以上に危険もつきものです。
転落の危険
屋根の応急処置は高所での作業が必要なため、転落の危険があります。
実際に、台風シーズンの屋根からの転落事故のニュースは後を絶ちません。
万が一、屋根に登る場合には、くれぐれも1人で登らないようにして、何かあった時にすぐに人を呼べるようにしておきましょう。
瓦の修理を安く済ませたいために、大怪我をしてしまっては本末転倒です。
プロの業者に任せると費用はかかりますが、怪我のリスクを回避することができます。
また、業者に依頼すると足場や高所作業車が必要な場所も対応できるので、自分では点検できない場所を調べてもらうことができますよ。
瓦を割ってしまう危険
瓦は耐久性が高い屋根材ですが、上から力がかかると割れてしまうことがあります。
不慣れな人が瓦の上を歩くと、体重がかかって瓦が割れてしまい、余計に修理する箇所が増えるというおそれもあるのです。
また、見た目ではわからないかもしれませんが、屋根に登った際に瓦がずれてしまい、雨漏りの原因を増やしてしまうことにもなりかねません。
そのため、瓦屋根の上での動き方を熟知しているプロの業者に依頼する方が安心です。
中途半端な雨漏り補修が雨漏りの原因を見つけにくくすることも
目に見える瓦の破損を直したものの、実は他にも雨漏りの原因が潜んでいたというのはよくある話です。
自己流の応急処置をすると、排水の流れが変わってしまったり、見えない雨漏りの原因を見落としたりするリスクがあります。
実は、雨漏りの原因は1ヶ所だけとは限りません。さらに、雨漏りは原因となっている場所から離れたところで発生することも少なくないのです。
そのため、プロの雨漏り修理業者でも、雨漏りの原因を突き止め、的確な工事をするのは難しいと言われています。
ただでさえ、雨漏りを適切に対処するのは難しい上、自己流のDIYで不適切な応急処置をしてしまうと、ますます雨漏りの原因が見つかりにくくなってしまうのです。
万が一、雨漏りが発生したらできるだけ早く雨漏り修理業者に依頼するのがベストだと言えるでしょう。
瓦屋根を修理するならプロの業者に依頼するのがベスト
ここまで、高所作業の危険性や、瓦の破損リスクなどを考えるとプロの業者に修理をお願いする方が良いことをお伝えしてきました。
しかし、プロに瓦の修理をお願いするとなると、やはり気になるのは修理費用ではないでしょうか。
ここでは、瓦屋根のパターン別の修理費用や、実際に修理をするまでの流れについてみていきましょう。
瓦屋根の修理費用
当然ながら、瓦の修理費用は屋根の面積によって変動します。詳しい費用については、業者に見積もりを作成してもらいましょう。
こちらは30㎡程度の屋根の修理費用の一例です。
瓦の葺き替え | 50万円〜120万円 |
瓦の差し替え | 5万円〜20万円 |
防水シートの交換 | 20万円〜30万円 |
漆喰の補修 | 3万円〜10万円 |
足場の設置費 | 15万円〜30万円 |
既存の瓦を廃棄する場合には、処分費用が別途必要になります。
どこを修理するかはケースバイケースですが、瓦の部分補修では30万円〜50万円程度、全体の葺き替え工事は70万円〜150万円程度が目安になります。
大きな家では200万円以上の工事費が必要になることもあるでしょう。
このように、瓦屋根の修理は数十万円単位の出費なので、なかなか決断できないかもしれません。
しかし、明らかに雨漏りしているのに放置していると、下地まで腐食してしまい大掛かりな修理が必要になってしまうかもしれません。
瓦の劣化や雨漏りが見つかったら、すぐに修理した方が長い目で見ると修理費を節約できるケースも多いものです。瓦屋根の修理を先延ばしにしている人は、この機会にぜひ修理を検討してみてくださいね。
現地調査と見積り
瓦屋根や雨漏りの修理を業者に依頼する時には、まず現地調査をおこないます。業者は現地調査で劣化している場所を見つけ、必要な修理内容と費用を依頼主に提案します。
このとき、見積りに詳しい工事内容や単価が記載していない場合は注意が必要です。何にいくらかかるかを明らかにしていない場合、手抜き工事をしてもわからないからです。また、見積もりに記載していない出張費や処理費用などを後から請求されないよう、見積りの内訳はしっかり確認しましょう。
費用に関しては、3〜5社程度の業者から相見積りを取るのもおすすめです。見積もりを比較して、工事費用の相場を調べてみてください。
多くの場合、依頼主は工事に関する知識がほとんどありません。
気になることは、業者に積極的に質問することをおすすめします。
業者によっては知識が不十分であったり、対応がいい加減であったりするかもしれません。
工事の契約をする前に、信用できる業者かどうか、対応を見てしっかりと判断してくださいね。
信頼できる業者の探し方
台風や大雨によって雨漏りしてしまったら、急いで修理業者に依頼したいと考えるのではないでしょうか。
しかし、慌てているからといって適当な業者に依頼するのは危険です。
先にも述べましたが、雨漏り修理には知識や経験が必要であり、プロであっても完全に止めるのは難しいと言われています。
なぜなら、雨はごくわずかな隙間からでも家の中に入り込んでしまうからです。
瓦屋根の場合も同様で、気づかないほどの瓦のずれや、目に見えない防水シートの劣化が雨漏りの原因となっていることも珍しくはありません。
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