「賃貸物件が雨漏りするのに、大家さんや管理会社が対応してくれない…」
賃貸物件入居者さんからのこんなお困り事は、古い物件に限らず、新しい物件でもあり得る話です。
修繕の義務は賃貸人である大家側にあります。
スグに対応してくれる大家さんが大半だとは思いますが、もし自分の物件の大家さんが対応してくれなかったら、どうすればいいのでしょうか。
この記事では自分の部屋が雨漏りをしていたら、何を確認し、どんな行動をとったらいいのかを紹介します。
賃貸物件の雨漏りは大家が修繕する
まず覚えておきたいのは、賃貸物件の修理は大家側が負担する義務があるということ。
民法606条1項
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
雨漏りをはじめ崩れ落ちた外壁や雨どいの破損など建物自体に不具合が起きた場合、大家さんが修理すると民法で決められています。
しかし残念ながら、すべての大家さんがスグに対応してくれるとは限りません。
修繕せずに放置しておくと、カビやシロアリの発生など二次被害が広がることもありますし、家財道具などが破損してしまうことも考えられます。
できるだけ早く修繕してもらいましょう。
雨漏りを見つけたらとる行動
賃貸物件で雨漏りを見つけた場合、入居者が自ら修理業者に頼んではいけません。建物の修繕は大家さんがするべきものですし、大家さんが提携している修理会社がある場合もあります。
雨漏りを見つけたら、まずは次の3つの行動をとってください。
- 大家や管理会社に連絡する
- 写真を撮る
- 応急処置をする
それぞれ詳しく説明します。
1、大家さんや管理会社に連絡する
雨漏りはポタポタと雨水が落ちてくるだけでなく、じんわりと壁にシミができることもあります。
雨漏りに気づいたら、スグに大家さんや管理会社に連絡をしてください。
雨漏りを放置すると、入居者が損害賠償を支払わなければならなくなることもあります。そのままにせず素早い行動が大切です。
2、写真や動画を撮る
雨漏りを見つけたらスグに濡れた部分を拭きたくなりますよね。しかし片づける前に証拠写真や動画を撮っておきましょう。
原因の究明や保険の申請に役立つだけでなく、もし大家さんや管理会社の対応が遅く被害が大きくなってしまった場合にも、証拠として提出することができます。
台風など自然災害が原因の雨漏りで家財道具が故障してしまった場合は、家財道具の修理は入居者の負担となります。
しかし大家さんの修繕対応が遅いために雨漏りし、それが原因で家財道具が故障した場合は損害賠償を大家さんに請求することができる可能性もあります。
いずれにせよ、証拠写真や動画を撮っておくのが得策です。
3、応急処置をする
写真や動画を撮影したら、直ちに応急処置をしてください。
天井からポタポタと水が落ちてくる場合は、バケツなどでキャッチします。
濡れてしまった床を拭き、バケツを置きましょう。バケツ内に水が溜まってくると、水しぶきが周りに飛散してしまうため、レジャーシートなどのビニールを敷いてからその上にバケツを置くのがオススメです。
また電化製品に水がかかると感電したり漏電したりする恐れがあります。
家電製品は移動させたりビニールなどで覆ったりしておきましょう。
大家が修繕に対応してくれない場合
この記事の序盤でご紹介したとおり、賃貸物件の修繕は大家側に義務があると民法で定められています。
しかし法律で定められていても、修繕の対応をしてくれない大家さんが少なからずいることも確かです。
入居者が修繕を請求することは当然の権利なので、遠慮せず「直してください」と何度も主張してください。
それでも対応してくれない場合は、次のような行動をとります。
許可を取ってから入居者が業者を手配する
雨漏り修理をなかなかしてくれないからと言って、入居者が勝手に業者を手配し修理してはいけません。
「こちらで修理をし、修理費を請求してもいいか?」と大家さんに尋ね、許可が下りた場合のみ自分で修理業者を手配することができます。
許可が下りていないのに入居者が勝手に修理をすると、費用を請求できなかったり、最悪の場合、退去時に原状回復を求められ逆に賠償請求されたりすることもあります。
後々トラブルにならないよう必ず許可をとり、可能ならその会話を録音しておきましょう。
許可が下りないとき
お願いをしても雨漏り修理をしてくれない上に、入居者が修理をする許可も下りなければ、入居者はどうすることもできないのでしょうか。
実は法律で、急迫の事情があるときは借主(入居者)が修繕をしてもいいと定められています。
民法607条2項
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人はその修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき
とはいえ”相当の期間内”がどの程度なのか、修繕費はどれくらいが妥当なのかなど、民法だけでは不明確なため裁判になることも。
入居者が強行修理するのではなく、できるだけ双方合意の上で修理をするのが望ましいです。
家賃を減額できる?!
大家さんが物件の修繕に応じてくれない場合、”賃料が減額される”と民法に明記されています。
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
しかし感情的になり入居者が勝手に一方的に家賃を支払わない、または減額して支払うと、債務不履行となってしまいます。必ず双方の合意があってから減額した家賃の支払いをしてください。
もしも大家さん側が減額に応じず裁判を起こすことになった場合、入居者は使用できない事実証明やいくら減額してほしいのかなどを裁判所へ説明しなければなりません。
家賃の減額を実現するのは、残念ながら難しいのが現状です。
減額を実現するためには、証拠を残すことはとても重要となります。先ほど紹介したように、写真や動画を撮影するだけでなく、会話の録音も念のためしておくとよいかもしれません。
証拠を録音しておく
大家さんや管理会社に何度も連絡しているのに全く対応してくれない場合、そのやり取りを録音しておくのも一つの手です。
なかなか対応してくれない場合は、「言った・言わなかった」の水掛け論になることもあるので、会話内容を録音しておくことも視野にいれましょう。
会話の当事者が相手の同意を得ずに録音することは「盗聴」ではなく「秘密録音(無断録音)」で、違法ではありません。
しかしプライバシー侵害のトラブルに発展することも考えられます。心配なら「言った・言わないとなるのが嫌なので、録音しておきます」などと言って録音しましょう。
消費生活センターへ相談する
何度言っても修理の対応をしてくれない場合、第三者が介入することで話がスムーズに進むこともあります。
消費者からの相談を専門の相談員が受け付けて公正な立場で処理にあたる『国民生活センター』へ相談してみるのもいいでしょう。
消費者ホットライン(消費者庁)
全国共通の電話番号 局番なしの188(いやや)
第三者に相談することで「以前から雨漏り被害があったけれど大家さんが対応してくれない」という証明にもなります。
まとめ
まず大前提として、雨漏りは大家さんが修繕しなければなりません。しかし残念ながら対応してくれない大家さんや管理会社もあります。
入居者が勝手に修理したり、家賃の減額をしたりするとトラブルになることもあるので、絶対に勝手な行動はやめてください。
賃貸物件で雨漏りした時には、まずは入居者が冷静な行動を取るべきです。とはいえ遠慮していては事が進みません。「雨漏りを直してほしい」と積極的に伝えてください。